ストーリー
母を数年前に亡くした小学4年生の美咲は、度々奇行を起こして家族を困らせている。 不登校の彼女を心配する学校の先生や周りの大人たちをよそに、美咲は陶芸家の工房で遊ぶようになる。 そんなある日、一人の女性が家にやってくる。父と親しげなその姿に、美咲はいずれこの女性が 「新しい母」になることを悟る。美咲とそれを取り巻く人々の人生が少しずつ動き出していく...。
かつて、あらゆる物事に触れることが新鮮で、発見の連続だった幼少期。社会的な役割や地位のない、取り替えのできない自分がそこにいました。 ありのままの自分であることで、周囲とうまく馴染めなかったり、誰かを傷つけることになったり、自分と自分以外の人たちとの関わり方の模索の時期でした。素直であることが時に自分自身も傷つけてしまう。
そんな途方もないどうしようもなさから、みんな、いつからか人や世界と距離感を保ってうまくやり過ごすようになっていきます。自分の理解できる世界のなかで、生きていくようになります。この映画では、痛くて、生々しい、子どもの頃の世界との関係を描こうと思いました。母という自分を無条件で愛して守ってくれる者のいない世界で、少女が人々と築く関わりの原風景を見つめようとした作品です。
母を数年前に亡くした小学4年生の美咲は、度々奇行を起こして家族を困らせている。 不登校の彼女を心配する学校の先生や周りの大人たちをよそに、美咲は陶芸家の工房で遊ぶようになる。 そんなある日、一人の女性が家にやってくる。父と親しげなその姿に、美咲はいずれこの女性が 「新しい母」になることを悟る。美咲とそれを取り巻く人々の人生が少しずつ動き出していく...。
コメント
度肝を抜かれました。髙田恭輔監督は、物凄く巧い。監督がやるべきことを正確に理解しているから、俳優たちが彼を信じ、ついていく。現にこの映画に出演している俳優たちは誰もがいきいきとしていて、普通ではない輝き方をしています。撮影現場にて即興で台詞を作っているらしいです。どうやったらそんなことができるのか…。とにかく俳優の芝居が素晴らしいです。
こどもの美咲には亡き母がみえる。美咲を見守るおとなたちは、自らのかなしみを抑え、死を抱えきれないこどもを慈しむ。おとなたちは、怒らない。
「奇跡」という言葉を使いたい、この映画の数々の震えるような画は「おとなは怒らない」という希望に支えられていることを、改めておもう。
撮影協力の場所も素晴らしく、学生映画を全力で支える芳醇な映画環境にも感服する。傑作。
驚くほど丁寧に編まれた60分。
どこまで情報を込めるか、誰を/何をどこまで見せるか。
我々観客のリテラシーと、そして映画そのものを信頼しながら、各々のショット、フレームの中に美しい小宇宙が形成されている。
世界の手触りを確かめるべく手を伸ばす少女。やさしく温かいものに包まれていてもなお、その小さな体には哀しみが宿っている。まだ乾ききっていない柔らかな「土器」に、少女が残した指の痕跡は、あまりにも淡く、じっと目を凝らさないと見ることができない。ふれることの叶わないものを、ゆるぎないまなざしで静かに見つめるこの美しい映画が、多くの人に観られることを心から願っています。